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特集 二宮清純のゼンソク人間学

シリーズ2 vol.9 後半 諦めず、チャレンジを

テストで客観的に把握

杉原: 今の状態をチェックするため、喘息コントロールテストを実施してみましょう。私も診察の中で、このテストをよく活用しています。患者さんは症状が出ていても、「大丈夫です」と我慢していることが多く、テストを行うことで客観的に状態を把握できます。

二宮: 結果は……25点満点中、23点。点数上は「順調です。あと一息」という診断になります。「この4週間に、どのくらい息切れがしましたか?」の項目で「1週間に1、2回」にマルがついていますね。

高山: これは風邪を引いてしまって……。それで、ちょっと最近は調子が悪かったんです。風邪を引くと症状が出てしまうので、「これはヤバイ」と思って治療しました。

二宮: では、風邪を引いたりしなければ、基本的にはコントロールできているというわけですね。

高山: ええ。普段は全く気をつけなくても大丈夫ですから(笑)。

就寝時の加湿器使用を

二宮: 私は犬やネコの毛がダメで、ペットを飼っている家に行ったり、人に会ったりしただけで症状が出そうになります。高山さんは日常生活で気をつけていることはありますか。

高山: 僕もネコはダメです。体がかゆくなってしまう。あとカビ臭いところは良くないですね。試合で地方の古い体育館に行くと、控室がものすごくカビ臭かったりする。その時はどうしても調子が悪くなります。

杉原: 私もネコを飼っている家に行くと、玄関を入った瞬間にわかりました。そのくらい敏感でしたね。発症の引き金になる要素はペットや、ほこり、気温や気圧、湿度の変化など、いろいろなものがあります。患者さんには症状を引き起こすリスクを極力、排除することをオススメしています。

二宮: カーペットやぬいぐるみなど、ほこりが溜まりやすいものは避けた方がいいということでしょうか。

高山: 家はフローリングですし、ぬいぐるみもありません。ベルトならいっぱいありますが(笑)。そういえば海に行った時、磯の香りをかいで調子が悪くなったこともあります。理由はわかりませんが……。

杉原: その場の状況がわからないので、あくまでも推測ですが、低気圧や台風が近づいていて、気温、湿度、気圧の変化が影響したのかもしれません。喘息患者の方は気候の微妙な変化にも敏感ですからね。

二宮: ホテルの部屋や飛行機の機内など乾燥した場所に長時間いると、調子がおかしくなることがあります。

杉原: 適度な湿度を保つことは不可欠ですね。特に冬場など乾燥した環境では、就寝時の加湿が大事です。よく日中に加湿器を使って、寝る時はスイッチをオフにしてしまう方がいます。起きている時は水分補給などもできるので、湿度が保てますが、寝ている間は一気に乾いてしまいますから。

ピークフローメーターの数値が目安に

二宮: 私の場合、花粉アレルギーも持っています。春先は喘息なのか花粉症なのかわからなくなってしまうんです……。

杉原: 喘息だと思ったら、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎だったというケースはよくみられます。それぞれの症状に合わせた適切な治療をしないと改善されません。他にも似た症状でCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や結核の場合もあります。結核だと吸入ステロイド薬を使うことで悪化してしまう危険性もある。何か気になる部分があったら、呼吸器の専門医に診てもらうことが重要です。ところで高山さんはピークフローメーターを使用されていますか。

高山: 以前は活用していましたが、最近はやめてしまいました。あまり、いい数値が出ないので……(苦笑)。たぶん、今も数値自体は良くないと思います。

二宮: ということは、状態は決して良くないのかもしれませんね。

高山: 久々にやってみましょうか。きっと数値は出ないだろうな……。フーーッ。

杉原: もう1回やってみましょう。しっかり息を吹き切ってみてください。

高山: フーーーッ。あ、数値が低い。今日は調子が良くないですね。やってみるとよくわかります。

杉原: 数値は理想値の6割弱ですね。ガイドラインに即して判断すると、重症の部類に入ってしまいます。もちろん、この測定結果はひとつの目安ですが、症状が悪化しないよう注意した方がいいですね。

継続治療でコントロール

二宮: 高山さんは来年には50歳を迎えます。現役生活の区切りは考えていますか。

高山: いつまでやるかは考えていませんね。お呼びがかかるまでは続けていきたいと思っています。

二宮: トレーニングは毎日やっているのですか。

高山: 若い時と同じように毎日やっていたら身が持ちませんよ(苦笑)。自分の体と相談しながら練習しています。プロレスラーは年柄年中、試合ですから、それも良いのかもしれません。試合が数カ月に1回のペースになったら、かえって調整が難しいと思います。

二宮: となると、まだまだリング生活は続きそうですね。杉原先生からみて、高山さんが今後、気をつける点はあるでしょうか。

杉原: やや気になるのは、風邪を引いたことがきっかけとはいえ、息切れをしたり、ピークフローメーターの数値が低かったりと自覚症状がある点です。自分自身で認識するほどの症状が出るのは、完全にコントロールしきれていない証拠。症状が出ると当然ながらパフォーマンスは落ちてしまうので、定期的に治療は続けたほうがいいでしょう。

二宮: 今、吸入ステロイド薬はどのくらいの頻度で使っていますか。

高山: 1日1回ですね。専門医の先生にも定期的に診てもらっています。

杉原: もしかしたら、回数を増やすか、吸入ステロイドと気管支拡張薬の合剤に切り替えた方がいいかもしれません。最近は1日1回の服用で効き目が持続するものも出てきていますから、それらも含めて治療法を見直してみてはどうでしょうか。

二宮: それでは、最後に喘息患者さんへのメッセージを。

高山: 「喘息だから」という発想は持たない方がいいでしょうね。喘息でも正しい治療を受けていれば大丈夫。僕がそうだったように、諦めることなく、いろんなことにチャレンジしてほしいですね。

杉原: 私は喘息のせいで好きな剣道を辞めてしまった人間です。今は喘息の症状をコントロールする方法も確立されてきています。定期的に治療を継続しながら、スポーツであれ、何であれ、患者さんではない方と同じように積極的に取り組んでいただきたいですね。途中で好きなことを諦める必要がないよう、専門医として、しっかり患者さんをサポートしていきたいと考えています。

杉原先生からのアドバイス

リスクを最大限排除する
喘息の症状を引き起こす要因はさまざまです。花粉やハウスダスト、ペットの毛といったアレルギー症状につながりやすいものは極力、避けましょう。治療と環境整備を並行して進めることが症状を改善に導きます。
就寝時も加湿器を活用
温度や湿度の管理も大切です。湿度は50~60%、温度は23度前後が最適と言われています。冬場など乾燥した環境下では、水分補給ができない就寝時こそ加湿が不可欠です。
専門医の適切な診断を
喘息の症状のようでも、他の病気が原因の可能性もあります。呼吸が苦しい、咳が止まらないといった場合は早めに専門医の診断を仰ぎ、適切な治療を行うことが重要です。正しい治療を続けることが、不自由ない生活を送るための第一歩です。

高山 善廣さん プロレスラー
東京都出身。大学卒業後、営業マンをやっていたが、プロレスラーの夢を捨てられず、UWFインターナショナル(Uインター)に入門。1992年、デビュー。95年のUインター解散後、Uインター関係者が立ち上げたキングダムに移籍。99年に全日本プロレスに所属し、大森隆男、浅子覚と「No Fear」を結成。その後、プロレスリングNOAHに移籍後、自由な活動を志してフリーとなる。フリー転身後は新日本プロレスリング等のプロレス団体のみならずPRIDEなどの総合格闘技にも出場。04年には脳梗塞を発症するも、2年の休養、リハビリを経て復帰。現在もプロレスを続けながら、TV解説、コメンテイターなどで活躍している。

杉原 徳彦先生
仁友クリニック院長
江戸時代から続く医師の家系に生まれる。杏林大学医学部、同医学部大学院卒業。東京都立府中病院(現在の東京都立多摩総合医療センター)呼吸器科で勤務後、祖父が開院した仁友クリニックで喘息治療に特化した診療を続けている。杏林大学医学部非常勤講師、日本内科学会認定医、日本アレルギー学会専門医。全日本スキー連盟競技本部専門委員も務める。

二宮 清純
愛媛県出身。幼い頃から喘息に悩まされる。スポーツジャーナリストとして五輪、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。著書に『スポーツ名勝負物語』、『最強のプロ野球論』、『プロ野球の一流たち』、『天才たちのプロ野球』(以上、講談社)、『勝者の組織改革』、『勝者の思考法』(以上、PHP新書)、『プロ野球の職人たち』(光文社新書)、『プロ野球「衝撃の昭和史」』(文春新書)など。最新刊は『プロ野球 名人たちの証言』(講談社現代新書)、『プロ野球の名脇役』(光文社新書)。

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