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特集 二宮清純のゼンソク人間学

シリーズ2 vol.10 前半 継続治療で大舞台へ

喘息に一本勝ちを

アテネ、北京と2大会連続で金メダルを獲得した谷本歩実は、喘息を乗り越えて世界の頂点に立った柔道家である。本人によると、北京五輪のわずか2週間前にも症状が出て苦しい日々を過ごしたという。
しかし、治療のかいあって、症状をコントロールし、本番では「呼吸が楽になって、すごく息がしやすかった。それで精神的にもすごく楽になりました」と語っていた。病気に打ち克った自信が、目の前の相手をなぎ倒す原動力につながったというわけだ。
今回、登場する秋本啓之は世界選手権優勝、アジア大会連覇など、国際大会の実績は申し分ない。唯一、経験していないのが五輪の畳である。
秋本の喘息の症状は、このシリーズに登場したアスリートの中では、かなり改善の余地があることが判明した。裏を返せば、今後の治療次第ではさらなる成績向上が見込まれる。
日本人のライバルも多い73キロ級。まずは喘息に一本勝ちすることが、五輪切符を得るための第一歩かもしれない。

二宮清純

体力強化で始めた柔道

二宮: 秋本さんは何歳から喘息を発症したのでしょう。

秋本: 母から聞いた話によると、2カ月半くらいの時に細気管支炎になって人工呼吸器をつけないといけないくらいひどかったそうです。それから風邪を引くごとに喘息の症状が出るようになりました。

: 2カ月半という時期だと、おそらくRSウイルスの感染によって気道が炎症を起こし、重篤な状態になってしまったのでしょう。その場合は、喘息を発症するリスクも高まるんです。

二宮: では、小さい頃から呼吸が苦しかったと?

秋本: はい。風邪を引くと症状がひどくなりました。肩で息をしないといけない感覚で、音がヒーッと鳴るんです。悪くなると吸入器で薬を吸っていた記憶があります。

二宮: 柔道を始めたのは?

秋本: 親父と兄貴がやっていた影響で5歳頃から始めました。喘息だったので、体を鍛える意味もあったんです。でも発作が出ている時は稽古がきつかったですね。

二宮: 治療は今も継続していると?

秋本: 2年ほど前に、症状がまたひどくなって、それからは気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬と、気管支を広げる拡張薬の配合吸入薬を勧められて使っています。症状が出ると、発作止めの薬も吸入しますね。

二宮: それまでは定期的な治療をしてこなかったのでしょうか。

秋本: そうですね。症状が悪くなったら病院に行って薬をもらってくるスタイルでした。持っていたのは発作止めの薬だけでしたね。しんどくても発作止めを使うと良くなるし、症状もひどくなかったので、定期的に診てもらうことはなかったんです。

: 配合吸入薬は、どのくらいの頻度で使っていますか。

秋本: 1日に2回吸入しています。ただ、正直に言うと調子が良いと使っていない時期もあります。

: それは決して良くないですね。ひどい時は、どんな症状になりましたか。

秋本: 痰が詰まった感じで、運動をするとすぐ息が上がってしまうんです。

花粉症対策も念入りに

二宮: そんな状況だと、試合にも支障が出るのでは?

秋本: 最近では昨年の韓国・仁川でのアジア大会で症状が出てきつかったです。スタミナはあるほうだと思うのですが、呼吸がしにくいので肩で息をする感じになってしまう。何とか優勝はできましたが、2、3週間はひどい状態が続きました。

: 話を聞く限り、秋本さんは、まだ自身の症状がコントロールできる段階になっていません。状態の良し悪しにかかわらず、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬と、気管支を広げる拡張薬の配合吸入薬を継続して使用することが重要だと思われます。

二宮: 喘息は季節の変わり目に症状が出やすくなります。私は花粉症でもあるので、春先は喘息と両方で非常につらい時期です。秋本さんは?

秋本: 僕も花粉症です。鼻が詰まるので、口を開けて寝てしまって、乾燥して喘息の症状が出る……。最悪のパターンですね(苦笑)。

: 花粉症もきちんと治療しておかないと、喘息の症状もコントロールが難しくなります。事前に花粉症対策も行っておくことが必要でしょうね。

二宮: 私は猫の毛でアレルギー反応を起こすので、ペットにも気をつけています。秋本さんは?

秋本: 僕は室内犬を飼っています。病院で調べてもらったら犬は大丈夫みたいです。

二宮: これから五輪を目指す上で、海外遠征も多くなるでしょうから、治療は万全にしておきたいですね。

秋本: そうですね。五輪代表になるためには国際大会で成績を残して、ランキングを上げることが第一条件になります。コンスタントに試合に出続けなくてはいけないので気をつけたいです。

: やはり、海外などに行った際の環境の変化は症状を引き起こす要因になります。気温が急激に変わったり、乾燥した場所に行くと悪化しやすい。発作が起きるリスクは常にあります。薬を活用し、喘息とうまく付き合いながら症状をコントロールすることが大事です。

二宮: 症状が出ないように何か予防で心がけていることは?

秋本: 乾燥した場所に行った時には加湿器を使います。加湿器がない時は、濡れタオルや洗濯物を部屋に干して乾燥しすぎないように気をつけています。

: 加湿はもちろん、室内のダニやほこりも症状を誘発する要因になります。動物を飼っているとなると、なおさら掃除もこまめに行って、アレルゲンを吸い込まないような環境をつくっておきましょう。

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秋本 啓之さん 柔道家
熊本県出身。父も兄も柔道家という一家に生まれ、5歳で柔道を始める。桐蔭学園高時代は無差別級の全国高校選手権で66キロ級ながら、重量級の選手を次々と破り、優勝。筑波大進学後は世界ジュニアを制して父子2代でチャンピオンに。2009年秋からは階級を73キロ級に上げ、10年の世界選手権を制覇。また嘉納治五郎杯(グランドスラム東京)も父子2代での優勝を果たす。14年は喘息の症状を乗り越えてアジア大会を連覇。グランドスラム東京も制した。3度目の挑戦で悲願の五輪出場を狙う。

日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野 准教授
権 寧博先生
東京都出身。日本大学医学部卒業。日本大学医学部第1内科入局。京都大学医学部ウイルス研究所生体応答学部門研究員。日本大学医学部分子細胞免疫・アレルギー学分野助教授。同、総合内科学分野准教授を経て、現在、呼吸内科学分野准教授。日本大学医学部附属板橋病院睡眠センターセンター長を兼務している。専門診療分野は、呼吸器内科、睡眠呼吸障害。研究テーマは、気道炎症の病態生理、アレルギーのメカニズムなど。

二宮 清純
愛媛県出身。幼い頃から喘息に悩まされる。スポーツジャーナリストとして五輪、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。著書に『スポーツ名勝負物語』、『最強のプロ野球論』、『プロ野球の一流たち』、『天才たちのプロ野球』(以上、講談社)、『勝者の組織改革』、『勝者の思考法』(以上、PHP新書)、『プロ野球の職人たち』(光文社新書)、『プロ野球「衝撃の昭和史」』(文春新書)、『プロ野球 名人たちの証言』(講談社現代新書)、『プロ野球の名脇役』(光文社新書)など。最新刊は『最強の広島カープ論』(廣済堂新書)。

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