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特集 二宮清純のゼンソク人間学

シリーズ2 vol.11 後半 躊躇せず、治療を

歯磨きと薬の吸入をセットに

二宮: 現状、寺川さんは症状をコントロールできているようですが、調子が悪くなる時期はありますか。

寺川: やはり、季節の変わり目は基本的に良くないですね。気温の変化が激しい時期は気をつけています。

二宮: 治療薬は何を使っていますか。

寺川: 今も吸入薬を朝晩、定期的に服用しています。歯ブラシの隣に置いているので、吸入してから歯磨きをするのが1日の習慣になっています。発作止めの薬は使うことがなくなりました。

金子: 薬の吸入だけだと、ついつい忘れてしまいますから、歯磨きと吸入をセットにするのは、よい方法ですね。歯磨きをする時には口をゆすぎますが、併せてうがいもすれば喉についた薬を洗い流すことができ、副作用の予防になります。

二宮: 私も吸入薬を使っていますが、声が枯れてしまうことがあります。服用後はうがいをするようにアドバイスされました。

金子: 声が枯れることは、吸入薬による最も多い副作用の一つですが、丁寧なうがいの励行により予防が可能です。もし、うがいを励行していても声が枯れてしまう場合には、受け持ちの先生に相談して、吸入ステロイド薬の種類の変更を検討してもらう必要があります。一般的に、ドライパウダー製剤の方が喉に粒子が付着しやすいですが、エアゾール製剤の場合でも声が枯れることがあります。エアゾール製剤の場合には、スペーサーという補助器具を使うと喉への付着が少なくなります。また、声が枯れる原因として他の病気の可能性を調べることも重要です。

二宮: なるほど。念のため、喘息コントロールテスト(ACT)をやってみましょう。

寺川: 「この4週間に、どのくらい息切れがしましたか」(ACTの質問の一つ):子どもを抱っこして荷物を持って走ったときには息が切れましたが……。

金子: それはかなりきつい運動ですね。通常の日常生活の動作による息切れとするとどうでしょうか。

寺川: 25点満点中、23点でした。

金子: 「順調です。あと一息」という判定になります。ほぼコントロールはできていると言ってよいでしょうね。

ハウスダストに注意

二宮: 寺川さんは一昨年、お子さんが誕生しましたから、環境には一層、気をつけているのでは?

寺川: いえ、それが全く気をつかっていないんです(笑)。繊細すぎない子どもにしたいなと考えているので、あまり制限はしないようにしています。外で這いつくばって、いろんなものに触れていますが、のびのび育てたいと思っています。

金子: 外でどろんこになって遊ぶことは免疫学的にもアレルギーを起こしにくい体質を作り、喘息の発症を防ぐ方向に働くでしょう。ただし室内においては、お掃除を徹底して、ハウスダスト(ダニ)をできるだけ減らすように努めてください。最近の家屋は気密性が高いため、冬でもダニが増殖します。ダニが多い生活環境では、アレルギー疾患を起こしやすくなります。

寺川: 家の掃除はきれいにするよう心掛けています。

金子: ダニがつきやすいじゅうたんなどは、なるべく外してください。カーテンや寝具など必要不可欠なものは、防ダニ加工が施されたものを使用するのもよいと思います。

寺川: 布団クリーナーを使うのも効果的ですか。

金子: 機能的にしっかりしたものであれば有効です。天日干しだけでは不十分ですので、布団クリーナーも活用されるとよいでしょう。

二宮: 喘息治療に関しては“優等生”だと思われますが、専門医の立場から今後に向けたアドバイスは?

金子: 競技生活を引退されて、出産、育児と環境が変わる中での体調管理、維持は大変だと思います。その中で喘息をうまくコントロールできているのは素晴らしいことです。競技生活において厳しい自己管理をしてきた習慣が、喘息治療にも活かされているのではないでしょうか。今後も体調を整え、症状が出ない生活を継続していただきたいと思います。

二宮: では、最後に患者さんにメッセージを。

寺川: 私の経験を踏まえて、一刻も早く治療を始めてもらいたいですね。薬を使ってみて、喘息の苦しさとトレーニングの苦しさが違うことがよくわかりました。もしかしたら、その違いに気づいていないアスリートがいるかもしれません。ぜひ躊躇せず、一歩を踏み出して治療に取り組んでもらいたいなと感じます。自分の未来を切り開くのは自分しかいないのですから。

金子: 寺川さんから、ご自身がそうであったように、他の水泳選手にも喘息症状を我慢している人が多いというお話を伺いました。アスリートでなくても、喘息症状のために日常生活が制限されたり、好きなことができなくなったりと、生活を快適に送ることができなくなっている人が大勢いるものと思われます。全ての喘息患者さんが、1日も早く適切な治療を受けて、健康な人と変わらない生活ができるようになって欲しいですね。

金子先生からのアドバイス

症状を我慢しない
喘息の症状は放置すると重症化する可能性があります。適切な治療を受け、これを継続することで症状をコントロールできるようになります。
治療薬の習慣づけを
治療薬は毎日忘れずに定められた回数で服用することが大切です。歯磨きとセットにするなど、日常生活の中で何かと合わせて行う習慣を身につけましょう。
室内環境を整備する
ハウスダストは症状を引き起こす原因になります。こまめな掃除や、ほこりがたまりやすいカーペットなどを取り除くなど、部屋の中の環境を見直しましょう。

寺川 綾さん 元競泳選手(ミズノスイムチーム)
ミズノ株式会社 ミズノスイムチームアシスタントコーチ。大阪府生まれ。喘息治療のため、3歳から水泳を始め、大学2年時には2004年アテネ五輪に出場。200メートル背泳ぎで8位入賞を果たす。08年北京五輪の出場は逃したものの、09、10年は日本選手権で背泳ぎ3冠を達成。11年の世界選手権では50メートル背泳ぎで銀メダルを獲得した。翌年ロンドン五輪では 100メートル背泳ぎで銅メダルに輝き、400メートルメドレーリレーでは、第1泳者として銅メダル獲得に貢献。13年の世界選手権では50、100メートル背泳ぎの2種目で銅メダルに輝いた。同年12月に競技生活からの“卒業”を表明。14年に第1子を出産。競技解説などで活躍している。

金子 猛先生
横浜市立大学大学院医学研究科 呼吸器病学 主任教授
1986年、山形大学医学部卒。88年、横浜市立大学大学院医学研究科内科学第一専攻。92年、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校心臓血管研究所(CVRI)に留学。2001年、横浜市立大学医学部第一内科講師。05年、同准教授兼横浜市立大学附属病院呼吸器内科初代部長。06年、横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器内科教授。07年から12年まで同副病院長を兼務。14年より現職。

二宮 清純
愛媛県出身。幼い頃から喘息に悩まされる。スポーツジャーナリストとして五輪、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。著書に『スポーツ名勝負物語』、『最強のプロ野球論』、『プロ野球の一流たち』、『天才たちのプロ野球』(以上、講談社)、『勝者の組織改革』、『勝者の思考法』(以上、PHP新書)、『プロ野球の職人たち』(光文社新書)、『プロ野球「衝撃の昭和史」』(文春新書)、『プロ野球 名人たちの証言』(講談社現代新書)、『プロ野球の名脇役』(光文社新書)。最新刊は『最強の広島カープ論』(廣済堂新書)。

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