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特集 二宮清純のゼンソク人間学

シリーズ2 vol.12 前半 病を乗り越え、駆け抜ける

市民ランナーからトップランナーへ

谷川真理は高校卒業後、強豪実業団には入団せず、一般企業に勤めていた。皇居で走る市民ランナーを見て、ジョギングからスタートした彼女は、1988年の名古屋国際女子マラソンで初めてマラソンを経験する。徐々に頭角を現し、90年には強豪の資生堂に入社した。その後は東京国際女子マラソン、ゴールドコーストマラソン、パリマラソンで優勝。市民ランナーから実業団のトップランナーへと上り詰めた。その彼女は幼少期からアトピーを抱え、小学1年には小児喘息にかかった。それらの病を乗り越えての大活躍だった。オリンピックへの出場こそ叶わなかったが、今もなお42.195キロに挑み続けている。

二宮清純

ランニングで荒療治

二宮: 谷川さんが喘息というのは意外な気がします。何歳に発症したのでしょう。

谷川: 元々、アレルギー体質で、アトピー性皮膚炎だったんです。喘息は小学1年生の時にかかりました。私の母曰く、小学校に上がって先生が非常に厳しくなった。幼稚園の先生は優しかったので、環境の変化によるストレスで発症したと……。

桑平: 喘息はストレスが原因で発症するわけではありませんが、発作を起こす引き金には十分になり得るでしょう。体質的にもアレルギーがあるということで、それにストレスが加わってのことだと思われます。たとえば試験前や、事業者の中には納期などが迫ってくると発作を起こす方もいます。

二宮: では、小さい頃から呼吸が苦しかったと?

谷川: はい。呼吸というよりも咳き込んでつらかったですね。その時は薬を処方してもらっていなかったので、母から砂糖水をもらって飲んでいました。眠れない時には母の膝上に抱き上げられて、映画とかを観ながら寝かしつけてもらっていましたね。

二宮: 私もアトピーと喘息を持っています。これらは遺伝するのでしょうか?

桑平: そうですね。我々が喘息かどうか診断する時に、ご家族にアトピーの方がいないかと伺っています。アレルギー体質が皮膚に出れば、アトピーになる。鼻に出れば花粉症、気道に出れば喘息になるわけです。

二宮: 小学1年で発症し、その時に治療はされなかったんですか?

谷川: 実は母が私に小児喘息だということを話してなかったんです。昼間は全然大丈夫なのになぜか夜に苦しくなる。思い当たるのは小学6年の時の担任の先生が厳しくて、毎朝2キロ走らされていたんです。雪が降っている時は3キロ。暑い時も寒い時も走る。半袖、ハーフパンツとかで走ると寒冷蕁麻疹もできましたね。ただ、それが荒療治のようになって段々、喘息の症状も治まってきました。中学1年くらいでは、たまに咳き込むことはありましたが落ち着いてきました。そこで母から小児喘息だったことを聞かされたんです。

二宮: 走っている途中に呼吸が苦しくなることはありませんでしたか?

谷川: いっぱいあります。やはり心拍数も上がって、呼吸も速くなりますからね。でも喘息の症状は中学1、2年生までだったので、そこからはほとんど出ていませんでした。

二宮: それは、よかった。

谷川: 強化されていったのかもしれませんが、小学校の頃から走るのは大好きでした。逆に負荷がかかっていたというのが、少し刺激になって強くなったのかなと思います。

二宮: 再発する人もいるとお聞きしました。

桑平: 大まかに3つに分けられますね。小児喘息があって、大人になって治る方が3分の1。小児喘息が治らぬまま成人喘息になるのが3分の1。残りは大人になってから発症するというケースです。ただ大人になってから出るほうが、どうしても長引いたり、コントロールしにくい場合がありますね。

大掃除や衣替えも要注意

二宮: 谷川さんはペットのフケや毛とかは大丈夫ですか?

谷川: ずっと犬を飼っていましたので、大丈夫ですね。ただハウスダスト系が結構ダメですね。衣替えをやる時はマスクをしてやらないとすぐにアレルギー反応がありますね。

二宮: ハウスダスト系は梅雨の時期などによく発生すると聞きますよね。

桑平: そうですね。ハウスダストもそうですが、同時にダニも繁殖しやすい季節ですからね。注意しないといけないのは、大がかりな掃除をする際に谷川さんのようにマスクをしてやらないと、大きな発作につながりかねません。

二宮: 掃除で舞った埃を思い切り吸い込んでしまうのはよくないですね。

桑平: ええ。きちんとマスクを装着するとか、こまめに換気をすることが大事です。

谷川: 完治は難しいのでしょうか?

桑平: 基本的には治りませんので、吸入の薬を使って、あらかじめ発作が起こらないように治療を始めておくのが一番です。そうすれば症状は出ず、治ったのと同じ状態は維持できますから、そこを目指していただきたいですね。

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谷川 真理さん マラソンランナー
福岡県出身。高校卒業後、OLとして一般企業に勤めていたが、1990年に実業団入りし、アスリートへ転身する。91年の東京国際女子マラソンで優勝すると、翌年のゴールドコーストマラソンも制した。94年のパリマラソンでは2時間27分55秒の大会新(当時)で優勝。現在はタレントとして活動する傍ら、市民マラソンに参加。マラソン、駅伝大会を主催し、地雷廃絶チャリティーなどにも一役買っている。

桑平 一郎先生
東海大学医学部付属東京病院 呼吸器内科 教授
東京都出身。東海大学大学院医学研究科博士課程修了。東海大学医学部教授。東海大学医学部付属東京病院呼吸・循環器センター長。医療連携室長。専門は呼吸器内科学、呼吸生理学、環境生理学。日本内科学会認定内科医・指導医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医。

二宮 清純
愛媛県出身。幼い頃から喘息に悩まされる。スポーツジャーナリストとして五輪、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。著書に『スポーツ名勝負物語』、『最強のプロ野球論』、『プロ野球の一流たち』、『天才たちのプロ野球』(以上、講談社)、『勝者の組織改革』、『勝者の思考法』(以上、PHP新書)、『プロ野球の職人たち』(光文社新書)、『プロ野球「衝撃の昭和史」』(文春新書)、『プロ野球 名人たちの証言』(講談社現代新書)、『プロ野球の名脇役』(光文社新書)など。最新刊は『最強の広島カープ論』(廣済堂新書)。

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