グラクソ・スミスクライン株式会社

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特集 二宮清純のゼンソク人間学

シリーズ2 vol.12 後半 完治を目指し、ゴールへ駆ける

古い建物は要注意!?

二宮: 普段は平均でどのくらいの距離を走るんでしょうか?

武田: 一日70、80キロくらいは走りますね。

二宮: 普通に言いますが、すごい距離ですよね。

武田: でもこの年齢ですから、昔に比べると練習量は少ない方ですよ。

二宮: 競輪のトレーニングは他の競技に比べても、相当ハードですもんね。

武田: そうですね。やはり冷たい空気を吸うのも良くないとは思うんですが……。自分ひとりで練習する時は、ほぼマスクをしてやっています。

相良: マスクをしてらっしゃるのはとても良いと思いますよ。もちろん、埃とかを防御するという面でもそうですが、まず温度差がある程度、抑えられますからね。冷たい空気が入ってくるのを防御できるという点もあるので、そういう意味でもいいですね。

二宮: 他に競輪の選手にも喘息の方はいらっしゃるんでしょうか?

武田: はい。聞いたことはありますね。たまにレース前に咳込んでいる選手もいますし。

二宮: 精神的なものとかは関係ないんでしょうか。

相良: レースの場合ですと、多少あるかもしれないですよね。咳込むというのはですね。

武田: そうですね。確かにレースが近くなればなるほど、咳が出やすくなっていますね。

二宮: 緊張感も影響するんでしょうか。競輪選手は全国各地でレースに出ますが、“ここは苦手だな”という地域は特にないですか?

武田: やはり建物が古い競輪場とか行くと、症状が出始める時はあります。エアコンとかの影響もありますね。

相良: そういうケースも結構あるかもしれないですね。たとえばカビとかがあるかもしれないですよね。エアコンは空気が出入りするところの掃除をしていなかったりしますと、かなり咳込むことがあると思うんです。もちろん風が冷たいということもあるのですが……。

過酷な環境にストレスも

二宮: 競輪選手は試合の前日から宿舎に缶詰めになる。私たちは入ったことがないからわからないのですが、どういう感じなんですか?

武田: すごく小さい部屋に4人で入ります。

二宮: 賞金王を獲得するような武田さんクラスでも、1人じゃないんですか?

武田: 1人じゃないんです。そこはみんな平等で、競輪選手はそういう団体行動を重んじるというか。

二宮: 個室じゃないと、咳とか出たら気になりませんか?

武田: 迷惑かなとは思うんですが、出始めたらもう、永遠と咳をしている感じなので。なるべく人の前ではしないようにするんですが……。

二宮: 外部との連絡も遮断されていて、競輪は厳しい世界ですよね。

武田: 全部管理されています。食事も入浴も決められていますしね。

二宮: 睡眠時間も?

武田: そうですね。消灯時間は全部決まっていますね。

二宮: レース前だからゆっくり寝たいなという時に咳込んだりしたらね。

武田: はい。“周りに悪いな”とかも考えたりしますね。

相良: そうなると、やはりストレスも関係しているかもしれないですね。発作の誘因の1つにストレスもあります。一番多いのはもちろん、風邪などのウイルス感染なんですが、ストレスも決して低くはないんですよ。ですから、置かれている環境下のストレスが関わっているところはあるのかもしれないですよね。

武田: とにかくレース会場に行って、全てが終わるとものすごく楽になりますね。

二宮: リラックスする時間が大切になりますね。就寝時は、夏でも長袖とか着て寝ますか?

武田: 自分は着ないタイプですね。Tシャツにパンツです。

二宮: 私は割と長袖を着て寝るんですよね。ちょっとした冷房とかでも体が冷えたりもしますから。

武田: 私は部屋に湿気を入れるようにしています。加湿器とかを寝るすぐ近くに置いたり、お湯を置いたりもします。

二宮: 空気中にあまり湿気があり過ぎてもよくないのでしょうか?

相良: そうですね。あれは結構、カビが生えやすくなりますからね。そこだけは注意された方がいいと思います。加湿器自体もきちんとクリーニングする必要がありますね。

武田: 自宅では喘息が出始めてからストーブを全部、暖炉に替えました。やはりエアコンなどよりも木の熱で家を暖めるようにした方がいい。それからすごく体調も良くなりましたね。やかんを置いたりして、湿気も出せますし。

呼吸筋を鍛え、スタミナアップ

相良: さて今の状態を確認するために喘息コントロールテストを実施してみましょう。

二宮: 25点満点です。悪い人だと20点を切ることもあります。元スピードスケート選手ですと、清水宏保さんにもやってもらったことがあるんですが、非常にコントロールされていましたね。

武田: 今、この4週間くらいのことでいいんですかね?

相良: 正直に書いて頂いて(笑)。

武田: はい。今、すごく調子がいいんですよ。4週間くらい。

二宮: 22点ですか。「順調です。あと一息」。悪くはないですが、まだ改善の余地があるということですね。

相良: 満点が一番理想ですが、なるべく満点に近づけるような形でコントロールしていければいいと思います。ただ今、一番の問題点はやはり、症状が起こった時だけ薬を使うという治療をされている。そこは継続された方がいいですね。そうすればおそらく満点に近くなってくると思うんですよ。ピークフローメーターは使ったことがありますか。気管支の状態も調べてみましょう。

二宮: 武田さんは競輪選手ですから、すごい数字が出ると思いますよ。

武田: これは今、すごく鍛えているので。吸って吐けばいいんですよね。フーーッ。

二宮: 軽くやってもすごい。もう一回やってみてください。たぶん次は最高点出ますよ。

武田: フーーーッ。

二宮: これはちょっと先生、別格じゃないですかね。だいたい皆、真ん中くらいなのに。

相良: 700。成人男性が500超えくらいなので、すごい数字ですね。

武田: 喘息で悩まされるようになってから、トレーニングの勉強を始めたんです。呼吸筋を鍛えることに注目して、こういう道具を作っているところに行ったんです。呼吸筋とかの数値も測ったりしたんです。自分の場合は、これでだいぶ良くなったんです。呼吸筋が弱いということだったので……。

二宮: 呼吸筋を鍛えることによって肺活量が増すということなんでしょうか?

相良: そうですね。ですから、そのトレーニングが良かったんだと思います。

二宮: 今後も結果を出し続けるためにトレーニングは減らさない方がいいのでしょうか?

相良: そうですね。おそらく今は発作が起こらない状況下に呼吸筋を鍛えることによってうまくコントロールできているんだと思います。今後は風邪を引かれた時に症状が起こらないようにするためにも継続的に薬を使っていた方が、選手寿命を考えた場合にもいいと思うんですよ。

二宮: 私は3歳の時から、小児喘息なんです。今も吸入薬を毎日使っているんですが、武田さんのような成人発症喘息は完治するものなのでしょうか?

相良: 完治というのは今の時点ではなかなか難しいと思います。ただ発症してからまだ、月日がそれほど経っていないことを考えると、完治する可能性もゼロではない。昔は気管支拡張薬を使った治療が主でしたが、今は大きく変わっています。炎症ということに着目して、治療体系も変化してきています。ひょっとしたらうまくコントロールすることができて、完治することもゼロとは言えないでしょう。

相良先生からのアドバイス

マスクで冷たい空気の吸入を防ぐ
埃などを防御する面があります。それだけでなく、マスクのおかげで温度差をある程度、抑えられる。冷たい空気が入ってくるのを防御できる効果もあります。
症状が出なくても治療は継続する
症状が出た時だけの、薬の吸入は良くないです。炎症は持続するので朝晩に、きちんと定期的な吸入をしてください。症状は比較的、早く治まりますが、炎症は長く続きますから続けましょう。

武田 豊樹さん 競輪選手
北海道出身。高校時代からスピードスケート選手として活躍し、長野五輪金メダリストとなる清水宏保のライバルとなる。高校卒業後は王子製紙スケート部に入部。競輪選手を目指して一時、引退するも1998年に現役復帰。02年ソルトレイクシティ五輪に出場し、500メートル8位入賞。その後、競輪選手へ転向。03年、立川競輪場でデビュー。04年1月にはA級3班からS級2班へ史上最速の特別昇級を果たし、その後は一気に競輪界のトップクラスに躍り出る。09年の日本選手権を制してGI初勝利。同年のオールスター競輪も優勝。KEIRINグランプリ2014では、悲願の初優勝を果たした。

相良 博典先生
昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 教授
獨協医科大学大学院医学系研究科修了。順天堂大学免疫学教室、英国サザンプトン大学留学、獨協医科大学越谷病院主任教授などを経て、現在、昭和大学内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門主任教授。

二宮 清純
愛媛県出身。幼い頃から喘息に悩まされる。スポーツジャーナリストとして五輪、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。著書に『スポーツ名勝負物語』、『最強のプロ野球論』、『プロ野球の一流たち』、『天才たちのプロ野球』(以上、講談社)、『勝者の組織改革』、『勝者の思考法』(以上、PHP新書)、『プロ野球の職人たち』(光文社新書)、『プロ野球「衝撃の昭和史」』(文春新書)、『プロ野球 名人たちの証言』(講談社現代新書)、『プロ野球の名脇役』(光文社新書)など。最新刊は『最強の広島カープ論』(廣済堂新書)。

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